【第2回】ねぎ

今月のPICKUPは、春夏秋冬様々な料理に大活躍の「ねぎ」を特集していきたいと思います。ただ「ねぎ」といっても様々…私たちでもビックリするような真事実が明らかに!? 先月に輪をかけて興味をそそる内容満載です! もちろんカネクの各担当者の考えた「カネクなレシピ」も掲載!

うんちく

英名 : Welsh Onion / 仏名 : Ciboule / 独名 : Lauch

葱の原産国は中国で、紀元前から栽培されていたとされています。

葱にはたくさんの種類があります。これからその中の代表的なものを取り上げていきますが、ポピュラーなものは「白ねぎ」「長ねぎ」「軟白長ねぎ」「葉ねぎ(青葱)」などです。

皆同じように思える葱ですが、関東と関西では好まれて使われる葱に違いがあります。関東では「白ねぎ」が好まれ、関西では「青ねぎ」が好まれます。

では中部地方では? まさか半分半分のねぎが使われているの?

実はそうなのです。中部地方では、根元の白い部分からは先に近い青い部分まで使います。地方独自の文化によっていろいろな葱が使われているのです。


  • 白ねぎ

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  • 葉ねぎ (青ねぎ)

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  • 長ねぎ

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  • 軟白ねぎ

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白ねぎの中にもたくさんの品種があり非常にややこしいのですが、大体その種を最初に作った人物の名前か、その種が生まれた土地の名前がついています。例えば、「金長」という千住系の品種を代表したものなどは、東京都葛飾区金町の「長谷準太郎」が第二次世界大戦後に作り出したもので、金町の「金」と、長谷氏の「長」をとって「金長」となったといいます。1962年(昭和37年)に、葱では初めて種苗名称登録された品種です。

そして我が地元を代表する葱である「越津ねぎ」についてうんちくを述べさせていただきます。この「越津ねぎ」は愛知県海部神守村越津(現在の津島市)で江戸時代に作られた品種といわれ、品種名はその集落からつけられています。千住葱と九条葱の中間型品種で、少し株分かれし、白根はやや平たく長い形をしています。それは土寄せを高くして白根部分が長くしてあるためで、食べてみると分かりますが、甘みが強いのが特徴です。現在でも「越津ねぎ」は愛知県の伝統野菜として地元の人たちに重宝されています。

「越津ねぎ」の中にも「黒柄(くろがら)」「合柄(あいがら)」「赤柄(あかがら)」という種類があります。現在栽培されているものは合柄系が多く、この種は愛知県の尾張地方で栽培が盛んになっています。

愛知県の東半分の三河地方では、以前は「麻生ねぎ」と呼ぶ葉葱が栽培されていましたが、近年では豊川市などで千住系の「豊川改良ねぎ」などが作られ、私たちの愛知県は、関東地方で好まれる千住系といわれる白ねぎと、関西地方で好まれる九条ねぎなどの葉葱の栽培圏の接点にもなっています。

軟白長ねぎという葱は、今我社の店頭で販売している葱の中で一番リピード率が高く、以前は夏場のみ北海道、青森を中心に出荷されていたのですが、現在では茨城や栃木など産地も豊富になってきてほぼ通年の出荷が見込まれ、お客様の要望に応えられるようになってきました。人気の要因は、食感が、葉の部分も白根の部分も軟らかく、甘みが多いところだと思われます。

次からは少し変わった葱たちを紹介していきたいと思います。

わけぎ (分葱)


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わけぎは、玉葱や葱の仲間で、根元の部分が少し膨らんでいるのが特徴です。葱は種子栽培、わけぎは球根栽培という違いがあります。鱗茎(りんけい : 地下茎の一種)が株分かれして繁殖するため、「分けとる葱」から分葱(わけぎ)というのが名前の由来です。古名は「冬葱(ふゆぎ)」と言い、地方によっては「ひともじ」とも呼ばれています。

葱のような刺激臭はないですが、特有の香りと風味があり、ぬめりが少なく、甘味が強いところから「ぬた」が代表的な食べ方として親しまれています。その他には、炒め物やサラダなど、様々な料理に活用できます。

あさつき


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あさつきはもともと山などに自生する葱の仲間であり、全般的には葉の色が淡緑な葱をさすといわれております。

江戸時代の古い書物によると、「気を下し、食を消し、また能く食を進める」とあります。あさつきは古くから食欲増進の効果があると知られていたようです。

栄養分として、カロチン、ビタミンB2、カルシウム等のミネラルが多く含まれている他に、葱に似た成分、香りを持っています。この香りは硫化アリルという成分が主で、消化液の分泌を助けたり、血液凝固を和らげたりする効果が認められています。さらに硫化アリルは、ビタミンB1の吸収を高めたり新陳代謝をよくしたり、利尿や発汗の促進、食欲不振やストレス、はたまた疲労の回復にと様々な効果が認められている成分です。

九条ねぎ


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九条葱の歴史は、紀元前より中国で栽培されていた原種が朝鮮半島を経て渡来したといわれています。古くは「日本書紀」にも書かれており、平安建都以前の西暦711年より京都で栽培が始まったといいます。平安前期の「続・日本書紀」でも九条村で「水葱」を栽培していたという記録も残っています。かの弘法大使がその昔、大蛇に襲われた時に葱畑に逃げ込んで難を逃れたという話があり、それ故に大蛇五重塔の上には葱坊主がつけられたという興味深い伝説もあります。九条葱の名前の由来は、江戸時代に現在の京都市南区九条付近で品質の良い葱が作られていたことから名付けられたと言われています。

現在、最も高級な葱の一つとしてスーパーや八百屋に並んでいますが、その香りの良さに癖になったお客様も多いのではないでしょうか?

下仁田葱


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下仁田葱は他の葱に比べて、葱特有のタンパク質や香辛料が多く含まれおり、ビタミンB、ビタミンCも豊富です。生で食べるとピリッと辛味がありますが、煮たり焼いたりして熱を加えると特有の風味と甘味が出てきます。下仁田葱は、別名「殿様葱」とも呼ばれ、江戸時代に大名が、「葱200本至急送れ、運送代はいくらかかってもよい」という手紙が残されていたことからその名が付いたとも言われています。秋口から出荷され、寒くなって霜が降り始めると、さらに甘みを増してきます。見た目は葉先が焼けて少し悪くなってきているように見えますが、葉先の「焼け」は霜降りの証拠なのです。冬場の鍋料理の主役といっても過言ではない野菜です。

めねぎ


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めねぎ(芽葱)はうなぎの肝吸いに愛称が良いことから、戦前より栽培されるようになりました。栽培方法は、土耕栽培のものを「芽葱」、水耕栽培のものを「姫葱」と呼んでいます。写真の芽葱は愛知県の「安藤農園」で栽培されているもので、ガラス温室で作られています。温室栽培のため年間通しての安定出荷が可能となります。発芽した種を狭い砂場に敷き詰めることにより細い葱が育ちます。夏場で20日、冬場で25日位の周期で収穫できるようになります。見ての通りとても繊細な葱なので、収穫作業からパック詰めまでほとんどの作業が手作業で手間隙かけてひとつずつ丁寧に作っています。香りが高いのが特徴で、最近ではお寿司などにそのまま使われています。

手間隙かかっている分、高級野菜の一つですが、近頃ではスーパーでも見かけるようになり、一般のお客様にも身近な野菜になってきています。

リーキ


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英語でリーキ、フランス語ではポアローとも呼ばれている太い西洋葱です。地中海沿岸が原産で、軟白した白い部分が太く短く、青い葉の部分が平らに潰れています。加熱するとトロトロと軟らかくなり、香りと甘みが増します。筒の部分は幾度にも巻き重なっています。古代エジプトですでに栽培されていたといわれる葱で、紀元前からギリシャ、ローマで広く知られていて、ローマの暴君ネロが、声を良くするために、油漬けにしたリーキを食べていたと伝えられています。16世紀にヨーロッパに紹介され、特に北ヨーロッパで盛んに栽培されるようになりました。現在ではヨーロッパだけでなく、西洋料理に欠かせない食材として親しまれています。

リーキには葱全般に含まれている成分アリシンはもとより、ビタミンが豊富に含まれています。その中でも最大の特徴は、ビタミンB群(特にビタミンB1、B2)が豊富に含まれていることです(ブロッコリーやほうれん草とほぼ同じくらい)。ビタミンB群はエネルギー代謝を促進するので、疲労回復にお勧めです。また粘膜の健康を維持する働きがあるので、風邪や口内炎などの予防にも効果的です。

余談ですが、日本で昔から食べられている「鴨南蛮」の南蛮とは、葱を使った料理のこと。オランダから渡来した南蛮人が、玉葱の代用品として日本の葱を使ったことから由来するそうです。

シーブレット (チャイブ)


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日本名で「エゾネギ」「西洋あさつき」と呼ばれるユリ科の多年草です。

原産国はヨーロッパ、シベリアとされていて、アサツキに近く、野菜よりハーブとして扱われることの多い植物です。

5000年前に中国で発見されたという説もありますが、日本にいつ頃渡来し、栽培されていたかは定かではありません。形態的な変異が著しい上、アサツキもシーブレットも学名が同じため、過去において厳密に区別されなかったからだろうと思われます。

ヨーロッパでは刻んで料理にふりかけたり、バターと合えたり、スープの薬味として日本のアサツキやミニネギのように使ったりと幅広く利用されているようです。

ミニネギ


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主に薬味用の葱として使われることの多い葱で、水耕栽培のものと土耕栽培のものとあります。白葱や長葱などとは違い、ほとんどの産地が年間安定出荷されています。水耕栽培のものは、日照の少ない梅雨時や気温の低い冬場、さらには台風などの雨風の時でも出荷が可能であるという利点があります。そのほとんどが無農薬栽培で出荷されています。

写真の「ねぎ太郎」はJA蒲郡市の看板野菜の一つで、水耕栽培のものです。某テレビ番組でも紹介されましたが、葱特有の辛味が少なくサラダ、しゃぶしゃぶなどでそのままさっぱりと食べられます。葱好きの方には少し物足りない部分はあるかもしれませんが…

反対に土耕栽培のミニネギは香りも豊かで薬味に使うのに適しています。双方の見分け方として、根の部分を見ると、スポンジのようなものが付いているものは水耕、根がそのまま見えているものは土耕です。