今回のPICK UPは「ほうれん草」。誰もが知っている一般的なお野菜ですがほうれん草の価格が他の野菜の価格を左右すると言っても過言ではないほど我々の業界では重要を担う野菜なのです。ただほうれん草と言ってもその種類は実に豊富! それでは「誰もが知っている」ほうれん草の「あまり知られていない」素顔までドド~ンとご紹介していきたいと思います!!
それではまずホウレンソウの由来から始めていきましょう。
ホウレンソウはカフカス地方からイランへ渡った野生種のある一年草で、ペルシャ(現イラン)で栽培が始まったとされています。中国には唐の時代にネパールの僧によって伝えられました。菠薐草は、西域の頗陵国(ネパール地方)から伝えられ、1590年頃にその名が付けられたとされています。
世界の様々な国で栽培されているホウレンソウですがその種類は実に豊富です。
中国では秋播きに適した東洋種が生まれました。ヨーロッパには遅れて10世紀以降に伝わり、長日条件下でもとう立ちしにくい性質をもつ西洋種が育成されました。我が日本には16世紀中期に中国から東洋種が渡来し、唐菜とか赤根菜の名で各地に広まったそうです。西洋種は19世紀後半以降に導入されましたが昭和初期まであまり普及しませんでした。しかし現在では東洋種と西洋種の交雑種が育成されて広く栽培されています。
一年中スーパーや八百屋さんに並んでいるホウレンソウ、耐寒性には大変優れているのですが高温には弱く、夏場の栽培には生産者の方々も気を使うみたいです。さらに酸性土壌には野菜中でもっとも弱いという弱点もあります。
緑黄色野菜の中でもトップクラスの栄養素を持つホウレンソウ。その成分は鉄分、カルシウムはもとより、ビタミンA、C、E、K、B1、B2、B6、B12等のビタミンも大変豊富に含まれております。食物繊維は軟らかく、消化によいので様々な料理に使われていますね。
この後はホウレンソウの種類の代表的なものなどもっと詳しく調べていきましょう。
ホウレンソウには大きく分けて東洋種と西洋種があります。まずはその東洋種です。寒さには比較的に強いのが特徴です。薄く切れ込み入った尖った葉先を持ち、根は赤色が濃く、土臭さは少ないのも特徴です。種子には2つの刺があることから刺種や角種とも呼ばれます。この「種」は正確に言うと「果実」で、果皮を取り除くと高温下でも発芽しやすくなることから最近では裸に剥いた種子も販売されています。
代表の品種として「山形赤根」「禹城(うじょう)」などがあります。
続いて西洋種です。元々昼の時間の長いヨーロッパで育成が進められてきた西洋種は長日でもとう立ちしにくいのが特徴です。そのため日本でも春から夏にかけての栽培に適しています。東洋種とは逆に、葉は丸型のものが多く、厚さもあります。根の色は淡く、少し土臭い品種が多いのも特徴です。
代表例のピロフレーはまさに西洋種の代表といえるくらい葉が厚い品種です。
ホウレンソウには雄と雌の株があり、風などの影響を受けて受粉します。その両親を別々の品種でかけ合わせたものを「一代雑種」と呼びます。
最近ではこの一代雑種の育成が盛んで、元来寒さには強いが暑さに弱いホウレンソウも季節や地方によって栽培しやすい品種が続々と生まれています。もちろん味にもこだわった品種も多くあります。
耐寒性に優れた早生品種のソロモン、とう立ちの遅いアクティブ、葉に切れ込みのあるリード、アトラス、また耐暑、耐湿性に優れた夏の栽培に向くおかめなどが近代に栽培され始めた一代雑種たちです。
我が愛知県で栽培され始めた品種として代表的なものでに治郎丸があります。現在の稲沢市で栽培され始め、第2次大戦時に一度栽培されなくなってしまいましたが、戦後に固定種として復活して全国的に広がったとされています。
それでは上記のホウレンソウ以外にも様々なホウレンソウがありますがその一部を紹介したいと思います。
一代雑種の一つで、写真はサンスイ生産組合が栽培するものです。サンスイ生産組合では、サラダほうれん草を手がけて約20年になります。サラダほうれん草は、ほうれん草の種を密植させ、水耕栽培で作ることにより茎が細く、軟らかくなり、サラダで食べることに適しています。従来のほうれん草に比べ、ほうれん草独特の味がマイルドになっています。
サンスイ生産組合では、出荷前に肥料を止めて、サラダほうれん草体内の硝酸性窒素を光合成により減らす工程を入れています。これにより苦味、灰汁(あく)を少なくすることができます。より食べやすくするために長年研究に研究を重ねて出来上がったサンスイ生産組合の主力商品の一つです。我がカネク青果とタイアップして販売をしています。
その名のとおり京都産のほうれん草です。特別に品種改良をしたほうれん草ではありませんが、京都の豊かな土壌、気候を生かして、灰汁の少ない甘みのある大変質の良いほうれん草が長年栽培技術を培ってきた職人によって作られています。露地栽培で赤根を付けたまま出荷されいます。
例外ではありますが、「つるな」という野菜があります。別名ニュージーランドスピナッチ(スピナッチ=ほうれん草)とも呼ばれています。なぜそう呼ばれるのかというと、その昔キャプテン・クックというイギリス人がほうれん草の味に似たつるなをニュージーランドより母国へ持ち帰ったことから名づけられたとされています。
日本では江戸時代から栽培されており、海岸の砂地などに自生する野草です。茎が盛んに分枝し、地を這うように半つる状に伸びることから「つるな」の名が付けられました。一度成長すると自然と種子を落とし翌年より同じ土地に毎年自生します。基本的には年中収穫できますが冬場の霜には弱く、冬場の出荷は減る傾向にあります。夏の終わりから秋にかけてが旬の野菜です。40cm~60cmくらいまで伸びますが矢端の若芽や若葉のところを食します。若芽だけを摘み取るため風に当たるとしおれやすく、濡れてしまうといたみやすいデリケートな野菜です。容器に入れてキッチンペーパーなどをかぶせて冷蔵すると気持ち長持ちします。なかなか食卓に並ぶことの少ない野菜ではありますが、カロチン、鉄分、ビタミンA・C等豊富に含まれている健康野菜の一つです。
ちぢみほうれん草、縮緬ほうれん草とも呼ばれます。霜、冷気、低温下に置いて栽培される品種です。低温下に置くことで体内養分の濃縮化で等質化が進み、葉が縮緬状になります。肉厚の葉を持ち、和種のほうれん草とは対照的でタァサイにも似た食感です。種蒔きは12月中旬から2月上旬までで、真冬のみの収穫です。